私たちが当たり前のように使っているモバイルバッテリーやワイヤレスイヤホンですが、海外から日本への輸入が難しいことをご存知でしょうか?
家電量販店はもちろんコンビニ、Amazonなどのネット通販で手軽に購入できるので簡単に送ってもらえそうな感じがしますよね。

モバイルバッテリーやワイヤレスイヤホンは、航空便(空輸)で海外から日本へ送ることはできません。

なぜ輸入できないのか、法律上NGなのか?などをご紹介していきたいと思います。


空輸できない理由

モバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホンには「リチウムイオン蓄電池」が搭載されています。
ニュースでも度々取り上げられていますが、このリチウムイオン電池による発火事故が相次いでいます。
リチウムイオン電池は強い衝撃を受けることで発火する可能性が高いため、安全上の理由から空輸は不可となっています。

電子製品用にはマンガン乾電池、アルカリ乾電池、リチウム電池などが使われます。リチウムイオン蓄電池(リチウムイオン単電池からなる組電池)を除き、電池の輸入・販売に際して特別な法規制はありません。リチウムイオン蓄電池は、体積エネルギー密度が高く、発煙、発熱により大きな事故につながる恐れがあるため、電気用品安全法の規制対象です。また、危険物として輸送規制があります。
引用:日本貿易振興機構(ジェトロ)

上記は電池の輸入についての概要です。
リチウムイオン電池は「電気用品安全法」という規制の対象と定められています。

過去に航空機で輸送している最中に、リチウムイオン電池から発火したことが原因で墜落してしまうという事故がありました。
このような取り返しのつかない事故を防ぐため、リチウムイオン電池を使用しているモバイルバッテリーは「危険物」として扱われ航空機を使った輸送は禁止されているようです。



電気用品安全法とは?

電気用品安全法は、電気用品による危険及び障害の発生の防止を目的とする法律であり、約450品目の電気用品を対象として指定し、製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進する枠組みとなっています。
引用:PSEインフォメーションセンター

モバイルバッテリーは発火事故が相次いだため、2018年2月1日に電気用品安全法(PSE)が改正され規制対象となりました。
「PSEマーク」という言葉を耳にしたことはないでしょうか?
PSEマークは電気用品安全法の基準がクリアした製品に取り付けることができるマークです。
電気用品安全法の対象となっている製品は「PSEマーク」の表示が義務付けられており、この認証を取らないと国内では販売できない決まりです。

リチウムイオンバッテリーの事故に関するニュースは度々取り上げられており、つい最近も国内でリチウム電池を積んだトラックが炎上したとのニュースが上がっています。

参考記事 »
首都高でトラック炎上 大量のリチウム電池積載

火災の原因ははっきりとリチウムイオン電池と名言はされていないですが、発火の危険性があることが分かります。



リチウムイオン電池すべてが輸送NGではない

ワイヤレス化が進む現在、ありとあらゆる物にリチウムイオン電池が使用されているのですべての製品が輸送できないのでは?という疑問が出てきます。

”リチウムイオン電池は輸送できない”と先述しましたが、すべてのリチウムイオン電池が規制されているわけではなく 要件を満たしていれば空輸が可能となっています。

電気用品安全法の規制対象となっているもの
・内蔵する単電池1個当たりの体積エネルギー密度が、400Wh/L(ワット時毎リットル)以上のもの
・主たる機能が外部機器(電子タバコやワイヤレスイヤホンの本体を含む)への給電である場合

規制対象外のもの
・バッテリーが製品に予め組み込まれているもの
・単電池の体積エネルギー密度が400Wh/L以下である
参考:経済産業省

例えばパソコンやスマートフォンは予めバッテリーが内部に組み込まれており、私たちユーザーはバッテリーの交換ができません。
このように機器に内蔵されているリチウムイオン電池は規制の対象外となっています。

ちなみに防災グッズとして知られる蓄電池は外部機器への給電を目的とした商品ですが、モバイルバッテリーとしては扱われておらず空輸が可能なようです。
交流や出力の関係で対象外のようですが、理科や科学の分野に入ってきますのでこちらは割愛させていただきます…



書類を偽って送ったらどうなるのか

日本郵便が提供しているEMSなどの国際便では配送する際にインボイスと呼ばれる書類の準備が必要です。
インボイスには「何の目的で送るのか」「商品の名前、素材」などの情報を細かく記入する必要があります。

EMSでも”航空危険物”に含まれる物は送ることができません。
アルコールや香水、モバイルバッテリーなどが送れない対象となっていますが、もし他の商品だと誤魔化して送った場合どうなるのでしょうか?


日本郵便公式サイトからダウンロードできる国際郵便の申告書によると 航空危険物に指定されている物を送った場合、50万円以下の罰金+配送した物は没収です。

過去にルールを守らず発送したことでこのような事故が起きています。



平成22年9月、米国の貨物専用航空会社UPSが運航中、搭載されたリチウム電池が発火し、他の貨物に燃え広がり墜落。乗員2名が死亡。リチウム電池は危険物であるにもかかわらず一部正しく申告されていなかった。
引用:危険物を航空輸送するために [PDF]

このように人命に関わる大事故に繋がる恐れがありますのでルールは絶対に守るようにしましょう。


船便を使えば輸入はできる

リチウムイオン電池が使われているモバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホンは航空便での輸送は禁止されていますが、「船便」を使った輸送は可能です。
ただ船便で輸送する場合いくつかデメリットもあるようです。

・輸送に時間がかかる
・配送料が割高

船から荷物を下ろす際の手続きなども必要なため航空便のようなスムーズさはありません。


電子タバコも輸送できない?

電子タバコもリチウムイオン電池が使用されていますよね。
電子タバコにハマっていたので(アイコスやプルームテック、JUULなど色々試しました)そのあたりも調べてみたのでこちらもご紹介します。
アイコスなんかは販売されている国が限られていますので、海外在住の方から送って欲しいなど頼まれたことはないでしょうか?

この電子タバコ(加熱式タバコ)、かなりの曲者です。
電子タバコも冒頭で紹介したモバイルバッテリーの部類に入るため、危険物扱いになり国内→海外への輸送はできません。
次は海外→日本への配送についてです。


2020年12月に、アメリカで「PACT法」という法案が改正されたことをご存知でしょうか。
改正の目的は『電子タバコの子どもへのオンライン販売の防止』です。
アメリカでは未成年の間でJUULなどのニコチン入り電子タバコが流行したこと、違法成分を含んだ製品による健康被害が問題視されたことで販売禁止となっています。 ニコチンを含む、含まない関係なしに電子タバコは販売できないと、どこまでが電子タバコなのか定義も変更されています。

未成年が電子タバコを手にすることがないようPACT法(※)が改正されたのですが、この影響により大手輸送会社のUSPS、FeDex、DHL、UPSが2021年3月以降に次々と電子タバコの配送を停止すると発表。
吸引に使用するデバイス、電子タバコで使用する液体リキッド(ニコチンの有無に関わらず)、付属品もすべて配送できない禁止項目としています。
※PreventAll Cigarette Traffickingの略

このように配送業者が軒並み電子タバコを送れない、としているので海外から日本への輸送もかなり厳しいようです。


また電子タバコの規制は国によって大きく異なり、輸入が禁止されている国もあり、メキシコでは2020年2月より電子タバコ、たばこを連想させる製品すべての輸入・持ち込みが禁止されています。

参考記事 »
電子たばこの輸入を2月20日から禁止に(メキシコ)


旅行者の多いタイでは電子タバコ禁止条例が発令されているため、所持・利用問わず懲役刑または罰金(最高で約169万円)が課されるようです。
罰則を知らずに持ち込んでしまい没収となってしまうケースが多発しておりタイ国政府観光庁のオフィシャルページ内で注意勧告がされています。


まとめ

ネットで簡単に手に入れられるモバイルバッテリーは実は販売が難しいことをおわかりいただけたでしょうか。

PSEマークが付いていないモバイルバッテリーから急に発火したという事故も最近話題になっています。
PSEマークが必須となったのもここ数年の話ですので、自宅にある物が安全なのか一度見直してみるのも良いかもしれません。
基準をクリアしていない粗悪品もまだまだ出回っているようですので、購入する際はお気をつけください。

モバイルバッテリーの処分方法については別の記事でまとめておりますので、こちらもチェックしてみてください。

公開日 : 2021/8/2


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