リチウムイオン電池 バッテリー 発火対策

スマートフォンやモバイルバッテリーなど、身の回りにはリチウムイオン電池を使った製品が数多くあります。

便利な一方で、リチウムイオン電池に起因する発火事故が年々増加していることをご存じでしょうか?

特に夏場は、モバイルバッテリーやスマホを高温下に放置したことが原因で事故が発生するケースが多発。

NITE(製品評価技術基盤機構)によれば、2020年から2024年の5年間で1860件の事故が報告され、うち約85%が火災に発展しています。

ガジェるではこれまで、Apple製品をはじめとする数々のガジェットをご紹介してきました。

こうした製品に欠かせないリチウムイオン電池ですが、事故のリスクも伴う繊細な部品です。

本記事では、製品評価技術基盤機構(NITE)の公式情報をもとに、リチウムイオン電池の事故を防ぐための安全な選び方や使い方のポイント、万が一のときの対処法までを詳しく解説します。

リチウムイオン電池とは?仕組みとリスク

リチウムイオン電池は高エネルギー密度繰り返し充電可能な性質を持ち、スマートフォンをはじめモバイルバッテリーやハンディファンなどの電子機器に使われています。

ただし、過充電や衝撃・高温などが原因で、発火や爆発を引き起こすリスクがあります

特に以下の条件で事故が発生しやすくなります。

  • 過充電・過放電
  • 高温環境での放置・使用
  • 衝撃や落下による内部破損
  • 劣化や膨張を放置
  • 非純正・安価なバッテリーの使用

実際にどのような事故が起きているのか、詳しく知りたい方は、
【リチウムイオン電池に関連する事故の実例をまとめた記事】もあわせてご覧ください。
ヒヤリとした体験や、ペットによる事故など、注意すべきポイントがわかります。

リチウムイオン電池製品の安全な選び方

近年、価格の安さや手軽さから非正規品のバッテリーや充電器を選ぶケースも増えていますが、こうした製品が事故につながる可能性は決して低くありません。

事故を未然に防ぐためには、製品を選ぶ段階での「安全性の見極め」が非常に重要です。

ここでは、購入時に注意すべきポイントを整理してご紹介します

また、モバイルバッテリーを飛行機に持ち込む予定がある方は、【モバイルバッテリーの機内持ち込みルールまとめの記事】もぜひご確認ください。
容量制限や個数制限など、知らないとトラブルになる可能性があります。

①正規品・PSEマーク付きの製品を選ぶ

日本国内で販売されている電気製品には「PSEマーク」の表示が義務付けられています

これは「電気用品安全法」の基準を満たした製品であることを示しています。

ネット通販などで購入する際は、PSEマークが付いているか要チェックです。

②メーカー・販売実績のあるブランドを選ぶ

信頼性の高いメーカーや長年の販売実績があるブランドは、製品の品質管理も徹底されています。

製品のレビューや実績を確認するのもポイントです。

「安い」を基準に選ぶのは避けたほうが良いでしょう。

③USBケーブルや充電器も純正を使う

バッテリー本体だけでなく、充電ケーブルやアダプターも安全性に大きく関わります

互換品や非純正の周辺機器を使うと、出力や電圧あが合わず、過電流や過熱、発火といったトラブルを引き起こす可能性があります。

やむを得ず異なるメーカーの組み合わせで使用する場合は、充電器とケーブルそれぞれの仕様「出力(W)・電圧(V)・電流(A)」を必ず確認してください。

たとえば、以下のようなポイントをチェックすると良いでしょう。

  • 充電器が「5V/2A(10W)」に対応しているか
  • ケーブルがその電流値に耐えられる設計になっているか
  • 接続するスマートフォンなどの端末が、その出力を安全に受け取れる設計かどうか

製品のラベルや説明書、メーカー公式サイトに記載されている「出力(W)・電圧(V)・電流(A)」の数値を比較し、互換性を確認しましょう。

特に「急速充電」に対応する製品を使う場合、規格(PDやQuick Chargeなど)も一致していることが重要です。

推奨されないケース組み合わせ早見表

デバイスの仕様(推奨) ケーブル仕様 充電器出力 結果 安全性
5V1A 5V1A 5V1A 安全
5V1A 5V2A 5V2A 基本的に安全だが注意が必要
5V1A 5V3A 5V3A 高出力で発熱や劣化の恐れあり
5V1A 9V対応 9V2A(QC対応) × 非対応機器では過電圧により故障リスク大
5V2A 5V2A 5V1A × 電流不足で充電が不安定・発熱の可能性も
5V2A 3A以上対応 30W(USB-C PD) 急速充電非対応機器では劣化リスクあり

リチウムイオン電池製品の使用中に気をつけたい5つのポイント

リチウムイオン電池を安全に使用するためには、正しい使い方を日常的に意識することが欠かせません。

知らず知らずのうちにリスクを高めているケースもあり、事故を防ぐためにはちょっとした注意が大きな差を生みます。

ここでは、使用中に特に気をつけたい5つのポイントをまとめました。

充電中は目の届く場所に置く

就寝中や外出中に充電したままにするのはNGです。

異常が起きたときにすぐ対応できるよう、状態を確認できる状態で充電を行いましょう

高温環境に放置しない

炎天下の車内や直射日光の当たる窓際などは、あっという間に高温になります。

内部温度が上昇すると電池の構造が破壊され、発火や爆発の危険が高まります。

実際、気仙沼の消防本部による実験によると、外気温19度の条件下で2時間で車内の温度が55度、ダッシュボード上は79.2度まで上昇したことが確認されています。

車内やダッシュボード、日光の当たる場所で放置は季節問わず避けましょう

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衝撃や落下に注意する

バッテリーは内部の仕組みが非常に繊細です。

落下や衝撃により内部が破損し、絶縁体が破れショートすることもあります。

持ち歩く際はケースなどで保護して使用すると良いでしょう。

異常を感じたら使用を中止する

以下のような変化があった場合は、使用をすぐにやめてください。

  • バッテリーが膨張・変形している
  • 異常に熱くなる
  • 焦げたような臭いがする
  • 使用中に突然電源が切れるなど、動作が不安定になる

特に、膨張・変形には注意が必要です。

NITE(製品評価技術基盤機構)が2025年3月に実施したモバイルバッテリーに関する調査においても、「膨らんだ(変形した)」という異常を経験した人が最も多く報告されています。

膨張したリチウムイオン電池内部には可燃性ガスがたまっていることがあり、外部からの衝撃や過充電により、発火や爆発につながる可能性があります。

無理に使い続けず、販売店やメーカーに相談をしてみてください。

廃棄するときは自治体のルールに従う

リチウムイオン電池は、家庭ゴミとして出すと火災の原因になることもあり大変危険です。

ゴミ収集車内ではゴミを圧縮、ゴミ処理施設では粉砕機で砕く作業が行われます。

リチウムイオン電池は衝撃や圧力に弱く、処理の過程で発火を引き起こす可能性があります。

お住まいの自治体の回収ルールを確認し、適切な方法で処分してください。

自治体での回収が行われていない場合、家電量販店の回収サービスの利用も一つの手段です。

リチウムイオン電池製品を安全に保管するためのポイント

使用していない時の保管方法にも、リチウムイオン電池の安全性を左右する重要なポイントがあります。

高温多湿の環境や強い衝撃を受ける場所に保管していると、知らぬ間に劣化や事故のリスクが高まるおそれがあります。

安全に長く使うために、保管時の注意点をしっかり確認しておきましょう。

保管中も高温・湿気を避ける

バッテリーは使用していない時でも劣化していきます。

湿気や熱に弱いため、風通しの良い場所での保管が推奨されています。

直射日光が当たる場所、密閉空間、水回りなどに置かないよう注意が必要です。

金属や可燃物と一緒にしない

リチウムイオン電池は、端子がショートすることで発火する可能性があります。

保管中の誤接触を避けるため、端子を絶縁テープで保護し、金属製の缶などに入れて収納すると良いでしょう。

発火した場合はどうする?緊急時の正しい対処法

リチウムイオン電池が発火した際の対処方法については、NITE(製品評価技術基盤機構)が2025年に公開した注意喚起資料でも、具体的な対応手順が示されています。

ここでは、その資料に基づいた対処法をご紹介します。

  • 煙や炎が出ている間は、絶対に近づかない
    内部で化学反応が起きている可能性があり、非常に危険です。
  • 火が収まったことを確認したうえで、大量の水をかけて消火
    可能であれば水に浸して、内部の温度を十分に下げてください。
  • 冷却後も安全のため製品は水に浸けた状態を保つ
    火が消えたように見えても、内部に残った熱で再び発火する可能性があります。
  • 状況に応じて119番通報を行い、消防の指示を仰ぐ
    自力での対応が困難な場合、発火が継続している場合は速やかに通報してください。

まとめ|ガジェットを“長く安全に”使うために今できること

リチウムイオン電池製品は、正しい知識と習慣で安全に使うことができます。

選び方では「PSEマーク」や「信頼できるメーカー」に注目し、使い方では「高温・衝撃・過充電」に注意しましょう。

事故を防ぐには、身近なことから一つずつ対策を積み重ねることが大切です。

安全に使用するためにも、今一度使い方を見直してみてください。

#ガジェット  #防災 

公開日 : 2025/7/17


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